
引用元: ・中国で相次ぐ“無差別”殺傷事件 困窮にあえぐ人々の声…「社会安全」にほころび [662593167]
■全財産は「スマホ1つ」…社会を覆う閉塞感上海に隣接する工業都市・江蘇省昆山市。製造業を中心に栄え、日系企業も多く進出している地域だ。ここに職業仲介業者が軒を連ねる場所がある。周辺にはネットカフェや安宿などもあり、全国から職を求めて人々が集まってくる。
地元の河南省に妻と子を残し働きに来たという37歳の男性。一晩30元(約600円)ほどの宿に泊まりながら仕事を探しているが、見つからないまますでに1週間以上が過ぎた。
「月に7000元(約14万円)稼げれば…と思うけど、そんな仕事は見つからない。あっても短期の仕事で、2~3か月働くと給与を下げられる。やり口が汚すぎるよ」
これから職業仲介業者に向かうという別の男性。目的はスマートフォンの充電のためだという。寒空の下、薄手のジャケットの下に首元がすり切れたTシャツがのぞく。
「財産は、これ(スマホ)1つだ」
中国ではモバイル決済が一般的で、スマホがなければ買い物にも事欠く、いわば“命綱”だ。荷物をほとんど持たず、路上で寝泊まりしながら日雇いの仕事を探す男性のような人は少なくない。
多くの労働者は職探しの状況がコロナ禍の後に悪化したと話す。賃金に見合った仕事が見つからないばかりか、雇い主の経営状況が悪化し、契約通りに雇用が守られないケースも続出しているという。すぐそばには富裕層が住むマンションも乱立している。日が暮れるにつれ、明かりがともり始めた高層マンションの窓の向こうとの間に、圧倒的な格差が存在していると感じた。
■住民が“監視”対象か 統制強化で再発は防げる?中国・広東省の事件現場で取材妨害する当局者
「社会の安全」を特に重視してきた習近平政権。政府批判を封じ、国民への統制を強めてきた中で連続して起きたのが“無差別殺傷”事件だ。広東省の事件が起きた直後には、習主席自ら事件の再発防止を指示するなど危機感がうかがえる。
広東省ではさっそく失業者や人間関係に不和を抱える人など「社会に不満を持つ人」を探し出し、管理するよう指示が出ているという。現場周辺では事件後、行政の末端組織から暮らしぶりの聞き取り調査を受けたという住民の証言も得た。この住民は「自分の経済状況がよくないから調査を受けたのかな」と苦笑いしていたが、さらに統制が強まることが懸念されている。
事件の取材中には、警察当局などによる尾行や行く先々での職務質問、カメラを傘で遮るといった取材妨害も受けた。深刻な実態を外国メディアに報じられることを警戒しているのだろう。中国国内のメディアからは景気のいい話ばかりが聞こえてくるが、人々の実感からはますます遠のくばかりだ。再発防止に必要なのは、事件の背景を明らかにし、国民の不満に向き合うことではないだろうか。
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