韓国で尹錫悦大統領が12月3日夜に「非常戒厳(戒厳令)」を宣言したことで生じた政治的混乱は、この非常戒厳が数時間後に解除されたことにより短期間で収束した。
だが今回の騒動を受けて、韓国の安定性と中国がこの地域で掲げる目標への影響を疑問視する声が上がっている。
5年間の任期の折り返し地点を迎えた尹は、支持率の急落と野党が多数派を占める国会の強い抵抗に直面してきた。
尹は今回の非常戒厳について、北朝鮮に同調する野党議員らが政府を無力化させることを狙った「反国家的な行動」に関与していると非難し、自らの決定を擁護した。野党側はこれを根拠のない権威主義的な主張だと一蹴している。
1980年以来初めてとなった非常戒厳の宣言を受け、韓国の国会はすぐに本会議を開き、同宣言の解除を要求する決議案を可決。尹は4日早朝に非常戒厳の解除を発表した。野党6党の議員は尹による「軍事クーデターの試み」を非難し、国会に尹の弾劾訴追案を提出した。
今回の騒動は、アメリカ式の民主主義が本質的に混乱をはらみ効果的なものではないという中国の論調に「裏付け」を与えるものだ。
中国の当局者たちは頻繁に中国共産党の統治と中国の地政学的ライバルであるアメリカを対比させ、自分たちの中央集権的な統治システムこそ安定しており効果的だと主張している。
■「とんでもない職権乱用」
米シンクタンク「スティムソン・センター(Stimson Center)」の上級研究員で北朝鮮分析サイト「38ノース」のディレクターでもあるジェニー・タウンは、尹が政治的利益のために非常戒厳を利用したことについて、自由民主主義の価値観を強く支持する国としての韓国の評判を傷つける「とんでもない職権乱用」だったと指摘。
また彼女は、アメリカ政府が尹の行動を強く非難しなかったことを批判した。
「今回の騒動を中国や北朝鮮のような国のプロパガンダの『勝利』と呼ぶのは大げさかもしれないが、今回の件が今後これらの国に利用される可能性はある。たとえば中国や北朝鮮が、周辺地域の真の『混乱の主軸』はどの国だろうかと問いかけるような筋書きが考えられる」と彼女は本誌に述べた。
「混乱の枢軸」とは、外交政策分析において中国、ロシア、北朝鮮とイランによる反欧米的な協力を指す意味で使われる言葉だ。
尹の前任者である文在寅(ムン・ジェイン)は外交において、特に北朝鮮との対話・関与に重点を置いていたが、尹の外交政策はその路線から外れている。
尹に批判的な者たちは、尹が韓国を外交的に孤立させ、紛争のリスクを高めていると非難している。
野党は4日、尹を弾劾訴追すべき理由を詳しく述べた声明の中で、「いわゆる『価値観に基づく外交』の名の下で、尹政権は北朝鮮、中国やロシアを敵に回し、日本中心の外交政策を好んできた」と指摘。
また尹が親日的な見解を持つ人物を政府の要職に任命したことを批判した。
尹の安全保障重視型のアプローチにより、防衛問題についてこれまで以上にアメリカと緊密に連携し、植民地支配などの遺産を理由に長年関係がうまくいっていない日本ともより緊密に連携してきた。
尹は2023年にキャンプ・デービッドでジョー・バイデン米大統領と日本の岸田文雄総理大臣(当時)との日米韓首脳会合に参加。これが日本との関係改善のはじまりだった。
それ以降、日韓は北朝鮮による核兵器使用の可能性を想定し、アメリカとの前例のない共同軍事演習に参加してきた。北朝鮮はこの演習を「核同盟」と呼び、脅威と見なしている。
韓国がアメリカとの連携を強め、韓国に3万人近い米兵を駐留させていることも、中国にとっての懸念事項だ。
中国は地域的な「連合」や「派閥」の形成について、中国の台頭を抑え込もうとするための戦略の一環と見なして頻繁に警告を発している。
また中国は、韓国がアメリカ主導の(日米豪印でつくる)協力枠組みの「クアッド」に関与し、日本との防衛協力を強化させていることについても、自国を封じ込めるための戦略の一環だと考えており、これが中韓関係のさらなる緊張につながっている。
この3カ国の枠組みが崩れることがあれば、中国にとっては日本と韓国に個別に対応できるようになるため有利な状況となる。
■韓国の民主主義の後退にはつながらない
以下全文はソース先で
ニューズウィーク 2024年12月6日(金)10時35分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/527756.php
引用元: ・【Newsweek】まさに中国に「棚ぼた」…韓国「戒厳令」がもたらした恩恵とは [12/6] [ばーど★]
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