近年充実してきた国際的な研究を重視した結果。体への影響は性別や年齢などによって差があるため、自分に合った飲み方を知ることが重要だ。
▽適量はない
「酒は百薬の長」と、国内では適度の飲酒を積極的に評価する考え方が長く受け入れられてきたが、指針は飲酒のリスクに注目した。「飲酒量が少ないほどリスクは低くなる」とする世界保健機関(WHO)や国際的な研究報告に触れた上で、酒量の把握には単純な量でなく、純アルコール量に着目すべきだとした。
心臓血管系の病気については、少量の飲酒は全く飲まない場合より死亡率が低いとの報告もあった。しかし近年、少量でも悪影響があるとの研究報告が増加し「適量はない」との見方が有力に。指針はこうした動向を反映し、日本人を対象にした疾患ごとの発症リスクを例示した。
男女ともに、少量の飲酒でもリスクが上がるのは高血圧。男性の胃がん、食道がん、女性の脳出血も飲酒自体がリスクだ。
また、1日当たりビールのロング缶(または中瓶)1本や日本酒1合に当たる純アルコール量20グラム以上を摂取すると、男女ともに大腸がんのリスクが上がるほか、男性は脳出血や前立腺がん、女性は胃がん、肝臓がんのリスク増につながる。
▽許容量示さず
指針以前に決定していた政府の健康づくり計画「健康日本21」は、生活習慣病のリスクを高める1日当たりの純アルコール摂取量を「男性40グラム以上、女性20グラム以上」とする。
指針はこれらの数字に言及しつつも「個々人の許容量を示したものではありません」とくぎを刺した。指針策定に携わった筑波大の吉本尚准教授(総合診療)は「WHOの適量なしとの見解などを重く捉えた」と説明する。
日本の飲酒対策は国際的にも寛容な傾向があると指摘されてきた。吉本さんは「世界的な潮流に合わせ、今後は厳しくなっていかざるを得ないだろう」と見通しを語る。
今回の指針を受け、酒類メーカー大手がアルコール度数8%以上の「ストロング系」酎ハイの新商品発売を控える方針を表明するなど、変化は見え始めている。
▽女性への影響
指針は年齢、性別、体質などにより、体が受ける影響が異なるとしている。特に女性は男性に比べ体の水分量が少ないことなどからアルコールの影響を受けやすい。
1日20グラム未満のアルコール摂取で脳梗塞や乳がんのリスクが高まるという。
一方で飲酒する女性は増加傾向にあり、厚労省研究班の全国調査(2013年)によると飲酒率は6割を超す。それに伴い、女性のアルコール依存症も増えている。
女性の依存症に詳しい白峰クリニック(さいたま市)の岩原千絵医師によると、女性の依存症はピークが30代と若く、摂食障害など精神面の合併症が多いのが特徴。
飲酒時に性犯罪に巻き込まれるケースも後を絶たないという。岩原さんは「女性の体に対するアルコールの影響は男性より格段に大きいことを意識する必要がある」と訴える。
引用元: ・【少量飲酒でも健康リスク 厚労省が初の指針】適量はない 高血圧や胃がん 影響に男女差
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