報道各社の世論調査では、石破内閣の支持率は50%前後と伸び悩んでいる。「論功行賞」「リベラル重用・保守派外し」という色彩が強いうえ、晋三元首相を「国賊」と罵倒した村上誠一郎氏を総務相に抜擢(ばってき)した影響なのか。
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、現実を無視した理想論を吹聴して困難と分かると豹変(ひょうへん)する「石破首相の本質」を喝破し、「短命内閣の危険性」を指摘した。
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石破政権が誕生した。石破首相は9日の衆院解散を表明したが、早くも自民党総裁選での発言をひっくり返した形だ。
新内閣は挙党一致のドリーム・チームにもならなかった。野党はもちろん、自民党内の反・石破勢力は倒閣に動くだろう。
発足当初から、これほど不人気な政権も珍しい。石破総裁誕生が伝えられると、株式市場は暴落で反応した。
それも当然だ。
石破氏は「金融所得課税の強化」をはじめ、「法人税や所得税の増税」をにじませ、岸田文雄政権がぶち上げた防衛増税1兆円の構想も引き継ぐ考えを示した。
日銀の利上げにも肯定的だ。これで株価が上がるわけがない。いずれ実体経済に波及し、下手をすれば、デフレに逆戻りする可能性もある。
解散表明にも驚かされた。総裁選では「国民に判断材料を与えないまま、解散はしない」と言っていたのに、突如、豹変した。
しかも、国会で内閣総理大臣の指名を受け、皇居での首相任命式を終える前の解散表明である。「選挙準備のためだ」などと理由を語ったが、「憲政の核心」に関わる話なのに、言い訳にもなっていない。
これは「石破首相の本質」を物語っている。
彼はいつも一見もっともらしい建前論を語るが、実現可能かどうか、しっかり検討したうえでの話ではない。単に理想を語っただけだ。現実の壁に直面して、困難と分かると、たちまち豹変するのである。
解散は森山裕幹事長の進言を受けたからだった。「早く解散しないとボロが出て、支持率が落ちるぞ」と諭されたに違いない。そこで初めて「現実の厳しさ」に気がついたのだ。
他の重要課題はどうか。
例えば、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設」である。NATOは加盟国に集団的自衛権に基づく相互防衛義務を課している。
だが、専守防衛を旨とする日本は、他国防衛のために軍事力を行使できない。したがって、憲法改正が不可欠になる。
党内には早くも反乱の気配
「日米地位協定の改定」も同じだ。米国には日本防衛義務があるが、日本には米国防衛義務がない。だからこそ、かつてドナルド・トランプ前大統領は「日本は米国が攻撃されても、ソニーのテレビを見ていられる」と不満を漏らした。
米国は「地位協定を改定したいなら、まず片務的な条約を改めたらどうだ」と反論するのではないか。
途中のハードルをどう越えるか、を考えずに、いきなり理想論に走る。これが石破氏の発想である。一言で言えば「書生論」だ。だから、誰かから現実の壁を指摘されると、途端に腰砕けになってしまう。このパターンは今度も繰り返されるに違いない。
石破首相は、いわゆる「裏金議員」の公認問題について、「公認権者である自分が説明責任を果たす」と言明した。甘い対応をするようなら、批判を招く。
逆に、裏金議員を公認しないようなら、反・石破陣営は黙っていないだろう。
最高顧問に就任した麻生太郎元首相は、記念撮影への同席を拒否した。党内には、早くも反乱の気配が漂っている。石破政権は短命に終わるのではないか。
長谷川幸洋
はせがわ・ゆきひろ ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。
https://www.sankei.com/article/20241006-YI2VBNBJNVCMNJVUD2OX2PBUTU/?outputType=theme_weekly-fuji
引用元: ・【長谷川幸洋】発足当初から、これほど不人気な政権も珍しい、石破政権は短命に終わる
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