まるで小型バッテリー
スマートフォンの充電などに使うモバイルバッテリーのような形状をしたCANインベーダー。縦約10センチ、横約8センチほどで、持ち運びもたやすい。
「CAN」は車の電子制御システムに使われている通信手順を指し、電気信号を発してこの通信手順を攪乱(かくらん)させ、キーがなくても車を動かせる。本来は、ドライバーがカギを車内に残したままロックしてしまう「閉じ込み」に対応する際に使われるものという。
捜査関係者によると、CANインベーダーを使った車両盗難の具体的な手口はこうだ。
車のフロントバンパーを開け、配線が集まる部品を取り出す。部品の特定部分2カ所に、インベーダーに接続した端子を挿し、起動。ランプが赤から緑色に変われば車の「乗っ取り」は完了。「短ければ2分半でできる」(捜査関係者)。
CANインベーダーの機器一式は、海外のインターネットサイトで、日本円にして80万円ほどで購入できるという。
ヤードから「発注」
自動車窃盗自体は昔からある犯罪だが、近年は分業化、計画性が強まっており、〝ビジネス〟の様相を呈している。
事件の発端となることが多いのが、盗難車を加工・保管し、密輸出するのに使われる「ヤード」と呼ばれる作業場からの発注だ。
ヤードを仕切る業者が、窃盗団とつながりのあるブローカーへ「この車がほしい」と依頼する。ある捜査関係者は「人気なのはトヨタ車。最近は『××という車のこれがほしい』などと、型式まで指定している」と打ち明ける。
ブローカーは窃盗団の指示役へ相談し、指示役は実行役や盗難車の運搬役などを使いながら、犯行に及ぶ。実行役はCANインベーダーなどを駆使して車を盗むと、離れた場所のコインパーキングなどに盗んだ車を駐車。運搬役が回収し、車をヤードへ持ち込む。
複雑な分業化からは、捜査を攪乱する狙いも透ける。捜査幹部は「盗むところをはっきり防犯カメラで押さえられていなければ、犯罪としての立証が難しい。盗むところからヤードへ持ち込むところまで(同じ犯人が)全部やっていれば、計画性が明白なのだが…」と唇をかむ。
どうすれば被害を防げるのか。捜査幹部は「CANインベーダーをつなぐ部品は車に数カ所あるが、車外からアクセスしやすいのは助手席側のものだけ」として、助手席側のスペースを駐車場の壁などに詰め、駐車することを推奨。
近年はCANインベーダーによる侵入を防ぐ防犯システムも普及しつつあるほか、「ハンドルロックを付けるなど、目に見える対策で『盗みにくい』と思わせることも大事だ」と話している。(内田優作)
産経新聞 2024/9/30 08:00
https://www.sankei.com/article/20240930-Y4HCN3RYP5KYRNWHU2M6QE3TWE/
引用元: ・完了までわずか2分半 高級車窃盗団の必須ツール「CANインベーダー」、進む分業化 [蚤の市★]
コメント