そして2024年の感染拡大は、夏に起こるものとしてはこれまでで最大規模となることが予想されている。
日本の厚生労働省が8月16日付けで発表した新型コロナの発生状況では、全国の定点当たり報告数や入院患者数が5月から増え始め、7月ごろから急増したことがわかる。
直近では少し減っているように見えるが、国立感染症研究所は、お盆などの週は「報告数が減少する傾向があり解釈には注意が必要」としており、実際に2023年の夏は8月末から9月頭にピークを迎えた。
5月初旬以降、新型コロナの感染は、米国、ヨーロッパ、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアでも着実に増加してきた。
7月にはバイデン米大統領が検査で陽性反応を示したほか、フランスのパリで開催された夏季オリンピックでは、出場選手のうち少なくとも40人の感染が確認された。
「新型コロナはまだわれわれの元を去ったわけではありません」と、世界保健機関(WHO)の疫病およびパンデミック準備・予防部門の暫定部長マリア・バン・ケルコフ氏は8月6日、記者団に述べている。
最近の感染者の急増を引き起こしているのは主に、同じ親株から派生した共通の変異をもつ新たな亜系統のグループであり、これらはまとめて「FLiRT(フラート)」と呼ばれている。
夏が終わりに近づくころ、米国では全国の学生たちが学校に戻っていく。この時期は昔から、インフルエンザやRSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)、そして近年では新型コロナを含むさまざまな呼吸器系ウイルスが流行する季節でもある。
「今年の秋冬に何が起こるのかについては、はっきりとはわかりません」と、東京大学のウイルス学者、佐藤佳氏は言う。FLiRT変異株は夏以降も進化を続ける可能性が高いが、まったく新しい亜系統が出現する可能性も否定できない。
「オミクロン株の出現のような現象」は2021年以降、毎年秋に起こっているように見えると佐藤氏は述べている。
FLiRT変異株は、2024年初期に米国や日本など世界的に感染が広がっていた変異株「JN.1」から派生した。FLiRTの仲間には、「KP」系統や「LB.1」系統など、現在流行している変異株の大半が含まれている。
現在の新型コロナウイルスワクチンはオミクロン株の一種である「XBB.1.5」に対応しているが、FLiRT変異株のもとになったJN.1のスパイクタンパク質にはすでに、XBB.1.5と比べて30以上もの変異があった。
コロナウイルスは、抗体から認識されることを避けるために頻繁に変異する。FLiRTは2つの変異により、抗体が新型コロナウイルスに結合しにくくなっている。
FLiRTのさらなる変異は、ウイルスがACE2受容体に結合する効率を高めて感染力を強めるか、既存の免疫から逃れるのを助ける、またはその両方でありうると、南オーストラリア大学の疫学者エイドリアン・エスターマン氏は言う。
初期の研究からは、FLiRT変異株は、これまでのワクチン接種や、過去のオミクロン株への感染で獲得された免疫を逃れるのに非常に長けていることがわかっている。
一方で、最近になって感染者が急増している主な原因は、これまでのワクチン接種や感染で獲得した免疫が弱まっているところに、免疫を回避するFLiRT変異株の能力が重なったためである可能性が高いと佐藤氏は考えている。
劉氏もまた、いま感染者が増えている理由の大部分は、追加接種を受ける人の減少と、夏に旅行する人の増加だろうと述べている。
救急外来の受診者、入院者、死亡者の数がこの夏、いずれも急激に増えたのは事実だが、パンデミック初期の流行時に比べれば、まだはるかに少ない。
また、FLiRT変異株がほかのオミクロン株よりも危険だという兆候も見られない。重症化を防ぐうえでは、ワクチンが今も有効であることがわかっている。
ただし、現在のワクチンは、以前に流行したオミクロン株の一種であるXBB.1.5に対応して作られている。このワクチンでも、FLiRT変異株を標的とする抗体はできるとはいえ、有効性は著しく下がっている。
そのためWHOや各国のワクチン規制当局は、2024年秋からの新型コロナワクチンをJN.1系統やその亜系統に対応したワクチンにするよう推奨している。
CDCは、生後6カ月以上のすべての人に、重症化を避けるため、2024~2025年版の新型コロナワクチンの接種を勧めている。日本では2024年度の秋冬に、65歳以上の人および重症化リスクの高い60~64歳の人を対象に、自治体による定期接種が始まる。
引用元: ・【今夏はコロナ新変異株FLiRT(フラート)が急拡大中】秋冬はどうなる? 従来の変異株との違いや危険性、ワクチンの効果など、今知っておきたいこと
従来型とどこが違うの?
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