ところが今回、日本では「パリ五輪があまり盛り上がっていないのでは?」という声をよく耳にする。
また、ネット上などでもそうした意見が見受けられる。事実、過去の五輪と比べるとそれほどお祭り騒ぎにはなっていないのだ。
なぜ盛り上がっていないのか。今回は、その理由を探ってみたい。
◆パリ五輪で競技に入っていない「野球」「ソフトボール」
まず日本で盛り上がっていない理由の1つは、日本では人気の競技種目がない、というのがある。例えば、前回の東京五輪では、人気スポーツの野球で“侍ジャパン”が、さらにソフトボール女子日本代表が金メダルを獲得し、大いに盛り上がった。だが、パリ五輪ではどちらも競技に入っていない。
日本で人気が高く、日本が得意とする競技で、多くの顔なじみの選手たちが4年1度という五輪の舞台で活躍するとなれば、盛り上がらないわけがない。
ちなみに視聴率が低迷していると言われる昨今だが、東京五輪の野球日本代表の試合では、決勝戦の世帯視聴率が37%(関東地区)を記録している。
東京五輪開催時の民放テレビの視聴率ランキングを見てみると、当時、大いに盛り上がった競技は、野球、ソフトボール、サッカー、マラソン、卓球、柔道。これらの競技が上位を占めているが、今回のパリ五輪では野球とソフトボールは競技がなく、サッカー日本代表は男子も女子も、準々決勝でメダルに届かず敗退した。
ベスト8に入っただけでも本来はすごいことなのだが、成績としてはメダル獲得から遠かったこともあって、日本で大きな盛り上がりなるまでには至らなかった。
バスケットボール男子日本代表も最近どんどん人気が高まっていることで注目されていたが、スタープレーヤーの八村塁選手が、けがでチームを離脱するなどし、3戦全敗でパリ五輪を終えている。
柔道も、国技ということもあっていつもながら注目度は高く、選手も検討したと思うが、今回はあまり盛り上がっていない印象だった。
SNSなどでは、やはり国技として「プライドが許さない」と感じた視聴者たちが、審判による不可解なジャッジがあったとしてある意味では盛り上がっていたが、それは大会の盛り上がりとはまた別の次元の話だと言えよう。
卓球も、世界的な日本人選手の健闘は言うまでもないが、あまり結果にはつながっていない。金メダルをかけてライバル国との接戦が続く、というような手に汗握るような展開には残念ながらなっていない。
つまり、人気スポーツがあまり盛り上がらなかった。ただこうした状況に加えて、筆者が、今回のパリ五輪が盛り上がっていないように感じるのには、五輪というスポーツ大会の「消費の仕方」が変わったからだ、と見ている。
今回のパリ五輪は、多くの若者を視聴者として取り込むために史上最もデジタル化した五輪という触れ込みだったが、そうしたデジタル化の波は日本にも来ていた。
これまでの五輪なら、地上波やBSでしか視聴できなかったので、テレビから流れてくるルールもよく分からない競技が次々と放送され、普段触れることがないスポーツを五輪だからこそ楽しめるという醍醐味(だいごみ)があった。
そういう雰囲気が「祭典」という空気を作っていたのだが、今回は、「TVer」「NHKプラス」など、オンライン上でストリーミング視聴することができた。それによって、見たい競技だけをピンポイントで見る傾向が強まっており、
テレビから勝手に流れてくる五輪競技を見る人の絶対数が減ったと考えられる。視聴の多様化によって、五輪は盛り上がりに欠けている印象が出てくる。
日本ではあまり盛り上がっていないと言われるパリ五輪だが、次回2028年のアメリカのロサンゼルス五輪では、野球もソフトボールも競技に復活することになっている。今回よりも、盛り上がる要素は多くなりそうだ。
山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0a8c37fbfef811def88902e938e6e41573ca911
引用元: ・【日本でパリ五輪がいまいち盛り上がらなかったワケ】日本で人気の競技種目がない
みんな寝てる
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