こんなはずではなかった。バンス氏は共和党全国大会で、スローガン「米国を再び偉大に(Make America Great Again=MAGA)」に共鳴する運動の後継者として歓迎された。
自身の回顧録を原作とした映画「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」で描かれたように、どん底から這い上がってイェール大学出身の洗練された優秀な弁護士となった経歴は幅広い層にアピールするはずだった。
しかし実際には、バンス氏は大会後初の選挙集会で堅苦しくておもしろくなく、出だしからつまずいた。守りに入り、頼りがいのない印象を与えることも少なくない。
好ましくない会話やビデオ、ソーシャルメディアへの投稿などが次々とリークされ、バンス氏とその陣営は対応に追われている。
29日には、バンス氏の法科大学院時代の同級生が2人の間で交わされていたやり取りを暴露。バンス氏が権力を求めて以前の理想を捨てたことで、トランスジェンダーである自分との長い友情がどのように終わったかを公にした。
共和党の一部では、かつては新星と見られたバンス氏が副大統領候補に選ばれたことを批判する声があるとの報道も流れた。
トランプ前大統領自身、自分の決断について考え直したに違いない。そうでなければ、そうすべきだ。
問題はトランプ氏が自分の過ちを決して認めないことだ。弱みをさらけ出すと考えているためだ。
しかし、トランプ氏の陣営は、いわばバイデン氏のように、党と国のために自発的に身を引くようバンス氏を説得することは可能だ。
トランプ氏は、政治的才能を持った人物を失うことを悲しみ、バンス氏の決断を渋々受け入れるふりをして、次に進むことができる。
トランプ氏が副大統領候補を選び直すことを妨げるものはほとんどないだろう。政党には、運営方法について大きな裁量権がある。トランプ氏が共和党を強く支配していることを考えれば、迅速な変更が可能であることは疑いない。
代議員がバーチャル形式で投票できることを考えれば、一部で推測されているように、大会を再び開催することさえ、それほど大きな障害にはならないだろう。
トランプ氏を翻意させ得る見通しはいくつかある。バンス氏を切り捨てれば、トランプ氏は選挙戦をリセットすることができる。
共和党のストラテジストを長く務めたカール・ローブ氏は29日にFOXニュースに出演し、トランプ氏がハリス副大統領の「脇役に追いやられているのは明らかだ」と厳しく評価。トランプ氏は「選挙戦の主導権を握るのが好きな人物だが、そうはなっていない」と話した。
バンス氏が支持を固めるはずだった中西部では、むしろ「お荷物」になっている可能性を世論調査は示している。
今月実施されたCNNとSSRSの世論調査によると、オハイオ、イリノイ、インディアナ、ミシガン、ウィスコンシンの諸州で、バンス氏を好意的に見ている人は28%に過ぎず、好意的に見ていない人は44%に上った。
バンス氏を巡る状況は、1972年の大統領選の民主党候補だったジョージ・マクガバン氏が副大統領候補として選んだイーグルトン上院議員を思い起こさせる。
イーグルトン氏はうつ病の治療を受けていたことがリークされ、その後に候補を辞退した。
現時点では、バンス氏が副大統領候補として長くはとどまれないように見える。
(パトリシア・ロペス氏はブルームバーグ・オピニオンの政治・政策担当コラムニストです。ミネアポリス・スター・トリビューン紙でシニア政治エディター・記者として働き、編集委員も務めました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-31/SHHO7ST0G1KW00
引用元: ・【こんなはずではなかった・・・】バンス氏は米共和党の「お荷物」、副大統領候補辞退あり得る
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