「それはトータルで見れば落ちていた。ぐらっときていたと思う」
「だろ?」
論点はそこではないはずだった。それなのに勝ち誇ったようにほくそ笑む審判団を見て、日本代表監督の鈴木桂治は向こうが議論をするつもりはほとんどないのだと悟った。
パリ五輪の競技が本格的に始まった7月27日、柔道の競技会場となるシャンドマルス・アリーナでは、準々決勝までの午前のセッションが終わり、スタンドからお客さんが帰り始めていた。その中で日本代表の金野潤強化委員長、古根川実コーチ、そして鈴木監督が説明を求めて審判席に集まっていた。男子60kg級の永山竜樹が受けた誤審とも思える不可解な判定の中身を質すためだった。
「待てがかかってただろ!」客席からヤジ
スペインのフランシスコ・ガリゴスと対戦した永山の準々決勝。相手は昨年の世界選手権覇者とはいえ、過去6戦全勝の永山に分があるように思われた。
開始直後から得意の内股を仕掛ける永山は、それを潰され、そこからひっくり返されそうになるのを耐える。まったく同じような展開をリピートした後、2分過ぎに三度同じ流れが起こった。少し不用意に繰り返しすぎたのかもしれない。今度は相手に袖車絞めをかけられた。
ガリゴスの腕と自分の首の間に指をねじ込んで必死に堪え、両足を絡ませて相手の体を懸命に引きずり下ろそうとする。絞められ始めて20秒ほど経っただろうか。主審が「待て」を宣告した。
ところが、ガリゴスがすぐに力を緩めない。6秒ほどしてようやく離れた時、永山は失神していた。すぐに目を覚まして自力で起き上がったものの、主審はそのときすでにガリゴスの一本勝ちを宣告していた。
「待てがかかってただろ!」と客席から日本人の声が飛ぶ。永山も収まらない。ガリゴスの握手を拒否し、相手が引き揚げてからも畳の上に残った。もちろん次の試合も始まらない。ブーイングが大きくなる。それは判定に対する疑問の声というよりは、それを受け入れない永山に対するものに聞こえた。その証拠に、3分ほど経ち、観念した永山が一礼して畳を下りるときには拍手が起きた。
「(誤審を)認めたとしても後日だと思う」
「待て」がかかれば試合は止まる。なぜ主審は絞め続けるガリゴスを見逃したのか。
もし「待て」の前に永山がすでに落ちていたと判断したのなら、なぜ「一本」と言わなかったのか。2000年シドニー五輪で起きた篠原信一vsドゥイエ戦での誤審騒動を思わせるような理解に苦しむ判定が再び起きた。
納得しきれない永山は、畳を下りて古根川コーチに「完全に待てって聞こえてたんで(力を緩めた)」と訴え、金野強化委員長も状況確認にすぐ近寄ってきた。しかし、その場でそれ以上できることはない。永山は敗者復活戦に回ることになった。
鈴木監督によれば、現行のレギュレーションではリプレーの要求など含めて判定を覆すような方策はなく、永山が畳の上に居残って抗議したこともむしろ問題視され、金野強化委員長に対して厳重注意が出されたという。セッション終了後の審判団との協議についても「判定が覆る可能性は小さいと思っていた」とわかった上での行動であり、その様子をスタンドから見ていた前代表監督の井上康生も無念そうにこう言った。
「(準々決勝まですべて終わった)この時点で判定が覆ることはないでしょう。そんなことになったら(この後の試合スケジュールなど)すべてを組み替えないといけない。だから審判団が認めることは絶対にない。認めたとしても後日だと思います」
続きはソースをご覧ください
https://number.bunshun.jp/articles/-/862403
引用元: ・「ナガヤマは落ちただろ?」柔道“誤審疑惑”に審判団は笑った「『待て』が間違いだった」不可解説明も…永山竜樹が記者に見せた涙 [Ailuropoda melanoleuca★]
最近は残心を教えないのか
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