滋賀・岐阜県境にある伊吹山で1日に起きた土石流災害が、シカの食害によって引き起こされた可能性が高いことが、専門家による現地調査でわかった。
シカの食害が各地で問題となる中、人家まで土砂災害の被害が及んだ初のケースとみられ、滋賀県などは詳しく調べる。地元の同県米原市によると、1日午前、伊吹山の麓付近で土石流が発生し、同市の伊吹地区に押し寄せた。
死傷者は出なかったが、住宅4棟に土砂が流入した。周辺では当時、1時間に34ミリの雨が降っていた。
伊吹山は希少な植物の宝庫として知られるが、2010年代から草木を食い荒らすシカの食害が目立つ。
周辺には2万頭前後が生息し、20年以降は中腹から山頂にかけて山肌が露出する「裸地化」が進行。
山の保水力が低下し、大雨の際に土砂崩れが起きていた。
定期的に調査している東京農工大の石川芳治名誉教授(砂防学)によると、斜面から流出した土砂や雨水はこれまで、途中のくぼ地でとどまっていた。
だが、今月7日の現地調査では、くぼ地が土砂で埋まり、あふれた大量の水が麓まで流れた痕跡を確認。
この水が麓付近の谷に集まり、谷底の土砂を押し流して土石流となったとみている。
石川氏は「シカの食害は希少植物への悪影響が知られているが、土砂災害のリスクもあることを知ってほしい」と話す。
県や市も今後、シカの食害との関連性を詳しく調べる。
平尾道雄市長は読売新聞の取材に、「食害に対して本当に危機感を持って対応できていたのか、反省しなければいけない」と答えた。
■シカ生息域、40年間で2・7倍
環境省によると、シカの生息域は約40年間で2・7倍に拡大し、食害によるとみられる土砂流出は各地で報告されている。
岩手県の早池峰山(はやちねさん)でシカが確認されるようになったのは2010年頃。
麓から中腹にかけて山肌が露出し、雨が降ると下流の川に土砂が流れ込むようになった。
県立博物館の鈴木まほろ課長補佐は「10年後、伊吹山と同じ姿になるのでは」と危機感を口にする。
04年には東京都奥多摩町の山中で、むき出しになった斜面から大量の土砂が流出し、水道施設の取水口を埋めた。
原生林が残る高知県香美市のさおりが原でも、裸地化が進み、09年に土砂崩れが発生した。
ただ、こうした事例がどの程度起きているのか、全国的な調査は行われておらず、
林野庁の担当者は「リスクは認識しており、個体数の管理などを通して対策を進めていく」としている。
引用元: ・伊吹山の土石流災害、シカの食害原因か…山肌露出の「裸地化」進行で保水力低下 [ごまカンパチ★]
しーか
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