「物々交換」がおカネの起源だという説は、長い間、まことしやかに語られてきて、今も多くの人に信じられています。しかし、この説には重大な欠陥があります。証拠が何一つ見つかっていないのです。そのため、歴史学者や人類学者、考古学者や古銭学者も、「そんな歴史的事実はない」と否定してきました。
デヴィッド・グレーバー(1961~2020)というアメリカの人類学者は、次のように言っています。
数世紀にもわたって研究者たちは、この物々交換のおとぎの国を発見しようと努力してきたが、だれひとりとして成功しなかった。(『負債論』酒井隆史監訳、高祖岩三郎・佐々木夏子訳、以文社、2016)
しかし経済学者たちは、「いや、これでなくちゃおカネの起源は説明できないから」と、彼らの意見を無視してきたのです。
では、証拠のある歴史的起源は、どういうものなのでしょうか。
先ほど登場したデヴィッド・グレーバーは、『負債論』(2011)の中で別の説を唱えています。それは、紀元前3500年のメソポタミアの、会計業務の記録が見つかったことで生まれた説です。
その記録からわかるのは、当時の貸借契約、つまり「貸し借り」の約束についてです。例えば、大麦畑で労働してくれる人に、雇用主は「大麦が収穫できたら、働いてくれた分を渡すよ」と約束しました。これは、雇用主が労働者に「労働力を借りている」ことになります。
逆に、労働者が雇用主に「働いて返すので、大麦を前借りさせてください」と言って、借りることもあったでしょう。そういう「貸し借り」を忘れないように、「借用証書」を書いていた。これがおカネの起源だとグレーバーは言います。
「信用」は英語でクレジットです。みなさんもクレジットカードでの買い物が、後払いであることをご存じですね。つまり代金を借りたままにしているのです。
クレジットカードは最近の発明だから、先におカネがあって後からクレジット、つまり信用システムができたと思っていた人もいるかもしれません。しかし実はおカネより先に信用取引があり、おカネがなくても人びとは借用証書を使って支払いをしていたわけです。
これを否定する史料は見つかっていないので、おカネの起源は物々交換ではなく、貸し借りだったと考えられるのです。
引用元: ・学者「おカネの起源は物々交換ではない。借用証書こそがおカネの起源だ」 [902666507]
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