「マルクス主義史観」は、日本人の多くが受け入れるところではない。満州事変以降はともかく、
「明治の日本は、欧米列強による植民地支配を逃れて頑張ったのだ」というのが日本人の実感であろう。
日本は確かに、不戦の思想に逆櫓(さかろ)を漕いで大東亜共栄圏創設に走ったが、
同時に、アジアに数百年間も巣食っていた欧米の植民地を一瞬で崩落させた。
それが「悪」というのなら、戦後、植民地再支配のために銃を持ってアジアに戻ってきた英国や、フランスや、オランダは
「悪」ではないのか。そもそも、どうして「人種差別」などという醜い思想が認められるのか。
これが敗戦時、日本人の多くが感じた矛盾である。
氏は、高度成長時代に育った日本人を代表する初めての指導者だった。
戦争も、人種差別も、植民地支配も知らない世代の代表である。そんなものはみんな悪に決まっている。
人種差別は終わり、すべての植民地が独立した。肌の色や性別にかかわらず、一人ひとりの人間がすべて平等で、
命と自由と幸せな暮らしを守ることができ、そのために政府が建てられ、政府は国民の自由意思と同意に基づく。
今日の自由主義的国際秩序は、このような考え方を根底に敷く。
そこには人間は善を求めて、よりよい社会をつくろうとするという「性善説への信頼」がある。
日本は、この自由主義的国際秩序を支えるリーダーとなる。いつまでも将来の日本の子供たちに謝罪させ続けることはできない。
いつまでも敗戦国の汚名の下で縮こまっていることはできない。
いつまでも国内冷戦が引き起こした思想的分断に、日本の安全保障政策を麻痺(まひ)させているわけにはいかない。
胸を張れ、頭(こうべ)を上げよ、一番前を歩け。
それが首相のメッセージであった。
日米欧を中心とする先進工業国家群の経済規模は、すでに世界経済の半分を切った。グローバルサウスが登場している。
中国とロシアは、全体主義の枢軸国となり始めた。インド、インドネシアなどの多くの国々を、自由主義世界のリーダーに育てるのは
日本の責務である。彼らもまた、人種差別や植民地支配に憤ってきた。しかし、それらはみな終わっている。
今は、この自由主義的な国際秩序を共に支えるべきである。それが、氏が「全人類に残した遺言」であろうと思う。 =おわり
■兼原信克
2024.7/7 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240707-E6UVT5327RPB7HGBGB6FPXQGJY/
引用元: ・【日本人の歴史観に新しい息吹】 安倍元首相が後世に残した最大の遺産 自由主義世界のリーダーと日本の責務 [7/7] [仮面ウニダー★]
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