ジャンビエさんは首都ポルトープランスの西、約30キロメートルにある沿岸の町レオガンに暮らす。ここでは重武装のギャング同士の抗争により、殺害される、あるいは家を失う人々が数千にも及んでいる。
ジャンビエさんが「とても親切で賢く、礼儀正しい少年だった」という当時16才のウィルナーさんの命を奪った洪水以来、レオガンではまだ数百人の住民が損傷した家屋やテントで生活している。
米国の気象学者は、今後数カ月間は大西洋海域において「尋常ならざる」ハリケーンシーズンになると予測しており、住む家を失った人々にとっては心の休まる暇もない。
「何よりも心配なのは、ここでまた同じような災害に襲われた場合、昨年と何か変わったという保証がまったくない点だ。ああいう大災害の影響を最小限に抑えるための本格的な対策は何1つとられていない」とジャンビエさん。
武装したギャングの間の抗争によりハイチ社会が混乱を極めているせいで、気候変動により頻度や規模が増している熱帯性低気圧への対策はますます難しくなっている。
主要な港湾が閉鎖され、食糧や医薬品、支援物資など不可欠な供給が絶たれているため、人道上の危機が深刻化している。
カリブ海に浮かぶ島国で、まさにハリケーンの針路上に位置するハイチでは、約500万人の住民が飢餓状態に陥っている。
2024年1─3月には、ギャングによる暴力で1500人以上のハイチ国民が殺害された。国連によれば、昨年の死者は5000人に迫り、数千人の女性が性的暴力の犠牲となっている。
ポルトープランスでは数十万人が住む家を追われ、ギャングによる違法な税の取り立てや輸送妨害のために、食品価格が急騰している。
だが、困窮する市民にとって最悪の日々はこれからかもしれない。ハイチはたびたび地震にも見舞われており、2010年の震災ではポルトープランスの街ががれきと化し、約20万人の犠牲者が出た。
ハリケーンシーズンが近づく中、大半のハイチ国民は日々命をつないでいくことに精一杯で、とても暴風雨の襲来に備える余裕はない。
ポルトープランスで、3つの非政府組織(NGO)によるコンソーシアムの国別ディレクターを務めるプロスペリー・レイモンド氏は、「現状でもすでに危機と言える」と語る。
カリブ海地域における過去10年で最も強力なハリケーンとなった2016年の「マシュー」に襲われたコミュニティーのいくつかは、まだその被害からの復興の途上にあり、テント暮らしを続けている被災者もいる、とレイモンド氏は言う。
米海洋大気局(NOAA)では今年6─11月のシーズンに最大7個の大型ハリケーンが発生すると予測しており、レイモンド氏はこうした予測がハイチ国民を脅えさせていると話す。
「ハリケーンがハイチを襲えば大惨事になる」と同氏は言う。
引用元: ・【気候変動】米国の気象学者 「今後数カ月間は大西洋海域において尋常ならざるハリケーンシーズンになる」
コメント