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現在の制度に問題が多いことは、私も承知している。企業や団体が実習生を不当に扱っても転籍(転職)できない、家族を帯同できないなど、国際社会から人権的に多くの問題があると指摘されてきたが、そのとおりだと思う。
だが今回の法改正も、問題がないわけではなさそうだ。実際には転籍のハードルが高いことや、母国の送り出し機関に多額の借金をして来日した労働者の借金負担を減らす具体的な対策が示されていないこと。
加えて、法改正では外国籍住民が故意に税金や社会保険料を払わない場合は永住権を取り消せるようになるという。特に私はこの永住権取り消し厳格化が非常に引っかかる。税の滞納に関しては既に刑事罰などがあるし、また外国籍者の納税率が特に低い統計があるわけではないのだ。差別的制度という指摘があるのもうなずける。
■日本で永住権を取り、海外へ移住
そもそも私は以前から日本の永住権付与の条件について、疑問を感じていた。昨年4月から特別高度人材制度が導入され、学歴や年収などが一定の水準以上であれば永住許可などを優遇する措置が始まった。従来より高度人材は経歴によるポイント加算制で、70点以上だと在留期間が継続して3年、80点以上では1年で永住許可を申請できたが、さらに厚い優遇が受けられる。
一方でポイントが低い人は10年間、真面目に働き、納税してやっと申請できる。私はこれをあまりに不公平だと感じるが、それでも高度人材、つまり高い専門性や知識を持つ外国人が日本に永住してくれるのなら日本の国益にかなうではないか、と思われる方も多いだろう。だが、高度人材の永住要件緩和が日本を大きく利するかといえば、必ずしもそうとは言えないようだ。
問題なのは、高度人材で日本に定着しないケースが見られるということだ。円安で相対的に稼げる金額が低く、日本語ができないととても不自由で、バイデン米大統領にまで「外国人嫌い」と言われてしまう日本に、どの国でも通用する高度人材が長く住むことがあるか、確かに疑問ではある。
それでも日本の奨学金で来日し、大学院で博士号を取り就職するなどして、高度人材となり永住権を取得する外国人が多くいる(昨年12月の累計で4万人超)のはなぜだろう。
それはほかの国に行くため、だ。日本の永住権を持っていれば、多くの国で高く評価される。また永住権を持っていれば他国での生活や仕事が思うようなものでなかった場合、いつでも日本に戻れる。つまり、高度人材の中には日本が「プランB」となってしまっている人がいるのだ。
エリート以外も安心して住める日本に
私はそういった外国人を何人も見てきた。一流大学院を出て大企業や大学に就職しても、すぐに良い仕事を見つけて海外へ移住してしまう。その多くは日本に戻らない。全く残念な話だが、この制度をつくった方々は、こうした事情を理解しているのであろうか?
私は、日本に帰化した元外国人の一人として、特別高度人材制度や安易な外国資本受け入れだけではなく、「ポイント」が低くとも日本語を学びながら真面目に地道に働く外国人をもっと大事にする国であってほしいと思う。確かに円の国際競争力が以前のような水準に戻る可能性は低いだろう。金銭的には日本で働くことのメリットは低いままということになる。
それでも来日して働く外国人は、金銭以外のメリットを日本に感じているのだから、そういう人が安心して家族と住める日本にする制度を充実させてほしい、と切に願う。だが今回の永住権「剝奪」につながる法改正は、そういう外国人を失望させるものになってしまっていて、残念である。
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
Newsweek 2024年06月07日(金)10時49分
https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2024/06/post-194.php
引用元: ・【Newsweek】ここがヘンだよ日本の永住権…エリート外国人には「踏み台」に使われ、非エリートには差別的 [6/7] [ばーど★]
外人の活用は期間労働で十分
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