だが、こうした有名大企業を集めた「寄り合い所帯」では世界の競争に打ち勝つことはできない。
台湾政府がTSMCのモリス・チャンに「世界に通じる半導体産業を台湾に」と依頼したように、「1人の突出した天才にすべてを委ねる」ことが世界で勝つための正しい発想だ。
※本稿は、木谷哲夫『イノベーション全史』(BOW&PARTNERS)の一部を抜粋・編集したものです。
● 台湾の還暦近い半導体の天才に 日本の「寄り合い所帯」は勝てない
産業を振興するために、日本では、政府が音頭を取って、有力企業何社かに出資させコンソーシアムを作り、先端的な技術開発を狙う、といったプロジェクトがよくあります。オールジャパン、とか、日の丸プロジェクト、と呼ばれるもので、日本のお家芸であると言えます。
日本人としてはぜひうまくいってほしいのですが、
1. 大企業が少額ずつ出す寄り合い所帯で
2. 具体的用途や顧客が不明な投資をする
ということでは限界があります。
半導体業界を例に、具体的に説明しましょう。
1. なぜ「寄り合い所帯」では勝てないのか?
インテルやAMDのように、現在世界をリードする半導体企業は一握りの突出した個人が作り上げたものです。
インテルでは、ロバート・ノイスとゴードン・ムーアが製品を開発し、アンディ・グローブが優れた経営力で育てました。AMDでは天才設計者ジム・ケラーがチップを開発し、経営者のリサ・スーがそのポテンシャルを開花させています。
また、M1チップの開発などアップルの開発全体を率いてきたのは、ジョニー・スロウジ(Johny Srouji)という人物です。ジョニー・スロウジはイスラエルのハイファに生まれ、テクニオン工科大学を首席で卒業した天才で、2019年にはインテルが次のCEO候補として検討したことが報じられたりもしています。
スティーブ・ジョブズは、アップルで自前の半導体を開発するために、ジョニー・スロウジを自分の給料の4倍を払ってヘッドハントしたのです。
そして、世界最大の半導体製造企業であるTSMCは、モリス・チャンという個人の頭脳から生まれました。モリス・チャンは創業時点で56歳になっていました。還暦に近い年齢で創業した会社が世界一になる、そのような奇跡がなぜ起こったのか?
台湾政府は、モリス・チャンに、「世界に通じる半導体産業を台湾につくり出してほしい」と要請しました。つまり、知りうる限り最も優れた1人の人物に、台湾の半導体産業の未来を託したのです。
半導体回路の設計も、新しいビジネスモデルを発想するのも、大人数の協業で可能となるものだけではなく、天才のひらめきが必要です。台湾政府が賢かったのは、成功するには1人の天才にすべてを任せるしかない、というビジネスにおける成功のカギを知っていたことです。
有名大企業をいくら集めてきても、サラリーマンが数多く関わり調整が必要となることで、突出したアイデアは回避され革新的な価値は生まれなくなります。
寄り合い所帯で、企業や大学の研究者が束になったら勝てるのではないか、という発想自体が実情とかけ離れているのです。
続きは
https://news.yahoo.co.jp/articles/424f0769855d2caa1cf209d7b7c34d5b6d79171e
[DIAMOND Online]
2024/6/7(金) 7:02
引用元: ・「オールジャパン」「日の丸プロジェクト」がたった1人の天才に惨敗するワケ [煮卵★]
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