ここ数年、中国人富裕層や中間層の一部が日本に「潤」(ルン=移住、移民、逃亡などの意味)していることは、私を含め、多くのメディアが報道してきた通りだ。
背景には中国の政治リスク(不透明さ、不安定さ)、コロナ禍のロックダウンなどがあるが、最近、取材した複数の中国人によると「第3の理由」もかなり大きなウエートを占めていることがわかった。それは「我が子に今の中国の教育を絶対に受けさせたくない」という理由だ。以前、『中国人が日本を買う理由』にも書いたが、中国で暮らすことの心配は、財産没収の不安、医療事情の脆弱さ、老後の不安、情報統制など言論の不自由さ、台湾問題など多岐にわたっている。しかし、その中でも、彼らがとくに声を大にしていうのが「子どもの教育問題」なのだ。
22年末に来日した中国人男性には小学生と中学生の子どもがいる。彼は2人とも中国のインターナショナルスクール(以下、インター)に通わせていたが、ロックダウンの際、家族4人でひもじい思いをしたことをきっかけに、2軒ある持ち家のうちの1軒を売り払い、日本に移住することを決めた。
きっかけはロックダウンだったが、以前から子どもたちが通う学校にも習近平政権の影響力がじわじわと押し寄せていて、不安を感じていたことも大きな理由だったという。
「中国では21年9月の新学期から、一部の学校で習近平思想の授業が開始されました。友人の子どもは普通の公立小学校に通っていましたが、当時『習近平新時代中国特色社会主義思想学生読本』という教科書を配布されたそうです。そこには、習近平氏がいかに偉大で道徳的に優れている人物かという内容が書かれていたとか。
子ども向けの簡単な内容ですから、その教科書だけ見ると、とくに政治色は感じなかったそうですが、これが中学、高校と進むにつれて、どんどん政治色が強くなり、12年間も思想統制が行われるのかと思ったら、友人は空恐ろしくなったと話していました。
中国ではこれまでも愛国教育を実施してきましたが、それは戦争の歴史などを学ぶもので、博物館見学などが主。毎日授業でやるようなものではなかったのです。でも、特定の政治家が教科書にまで出てくることに対して、かなり心配な気持ちになりました。
幸い、インターの場合はあまり関係なく、同じ時期に習近平教科書が使われることもなかったのですが、徐々にその影響を感じ始めたので、インターといえども、中国国内にある学校なら、政府からいつ、どのような通知があるかわからないと思っていました。それで、政治と関係なく自由に暮らせて、教育レベルが高い日本への移住を決断したといっても過言ではありません」(男性)
この男性の子どもは日本のある地方都市のインターに引き続き通い始めた。英語教育を中断させたくなかったため「日本にも中国で通わせていたのと同じ系列のインターがあってよかった」と話していた。
そこにはこの男性と同様の考え方を持つ中国人保護者の子どもが複数いるということだった。
強制的な軍事訓練を見て「教育を受けさせたくない」
もう一人、同じく22年に来日した中国人男性には小学生の子どもが1人いる。この男性は以前から中国の政治に不信感を抱いており、かなり前から知人が多い日本への移住を検討していたが、コロナ禍になって移住計画を延期せざるを得なかったという。
コロナ禍の終盤、ようやく日本に移住することができたが、前述の男性のように、子どもには中国の教育を受けさせたくないという固い信念を持っていた。
「私がいちばん嫌なのは学校の軍事訓練なんです。以前から中学や高校、大学に入学する際、2週間ほど軍事訓練があり、義務化されていました。私自身も経験しましたが、嫌で仕方がなかった思い出があります。
台湾問題などがあるからか、最近では小学生にまで軍事訓練が導入されました。まだ幼い子どもたちが敵に立ち向かうために軍事訓練をさせられる様子を見て、私はもうこれ以上、子どもに中国の教育は受けさせたくない、と心の底から思いました」(同男性)
日本教育のレベルの高さに移住を決意
そのため、日本にやってきたのだが、この男性は他の多くの在日中国人のように、日本の有名校に子どもを通わせなくてもいいと考えているという。
引用元: ・日本移住を希望する中国人が激増か 「子どもに中国教育を受けさせたくない」 [PARADISE★]
なあ岸田
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