◆「切り取られて炎上しますよ」「訂正致します」 発言が出たのは、19日に公開されたユーチューブチャンネル「ReHacQ―リハック―」のインタビュー番組の後半。茂木氏は「前向きな政策をやっていく」とし、「パンとサーカス」に触れた。
「どうですかね。今国民の皆さんが求めているのは、多分ローマ時代のパンとサーカスで言ったら、パンじゃない、サーカスなんだと思うんですよ」と話し、こう続けた。「例えば、給付金の支給も悪いことではないですけど、それよりも景色が変わった、何かやっぱり新しい日本が見える、自分たちの未来が見えると。ある意味、コロッセオ(闘技場)で展開したのとは違った決闘ですけど、サーカスなんです、やっぱり」
司会者に「パンが食べられない人もいる。切り取られて炎上しますよ」と突っ込まれると、「訂正致します」と応じた。しかしその後もパンとサーカスの話を続け、「今の日本でどちらが必要かと言うと、景色が変わること。一人一人にチャンスが生まれる、豊かになっていると実感できることが大切だ」とした。
引用元: ・自民茂木氏「国民が求めているのはパンじゃない、サーカスだ!」
やりとりを素直に受け取ると、茂木氏は「国民が前向きになれる政策」をサーカスと表現したようだ。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「発言の裏には、『今の総理じゃ、観客が全く沸かない』『総理を代えることで違う景色を見せるんだ』という意味が含まれているのでは」とみる。
しかし、「ギリシア・ローマ名言集」(岩波文庫)によると、「パンとサーカス」という言葉は、古代ローマの詩人ユウェナリスの「(民衆が)熱心に求めるのは、今や二つだけ パンとサーカス」という風刺詩から来ている。
パンは、食料として無料配布された小麦で、サーカスはコロッセオで行われる剣闘士と猛獣の決闘などの見せ物を指す。ユウェナリスはそれに熱狂するローマ民衆の堕落をやゆした。これが転じて、権力者が民衆に食べ物や娯楽を与え、政治への批判精神を忘れさせる愚民政策を象徴するようになった。
伊藤氏も「『パンとサーカス』という言葉が意味するのは愚民政策だ。国民なんて食べ物と娯楽を与えておけばよい、という上からの目線の発想をしていると受け取られても仕方ない」と指摘する。
そもそも政界では、野党が与党批判をする際に使われることが多い。茂木氏自身、2012年の講演で「今の政府のやり方は明らかに『短期のバラマキ』。ローマ帝国の末期で言うパンとサーカスの世界です」と当時の民主党政権を批判している。
ローマ帝国はパンとサーカスによって民衆の不満を抑えて繁栄したという歴史解釈もあるが、少なくとも現在、言葉の上では前向きなニュアンスに乏しい。改めて真意を茂木氏の事務所に尋ねると、「発言は番組内ですでに取り下げた」と回答があった。
パンくれよ
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