非営利団体エナジー・アンド・クライメート・インテリジェンス・ユニット(ECIU)は13日に発表した研究の中で、記録的洪水が耕作面積の減少や不作をもたらし、英国の食料自給力を10%近く低下させる恐れがあるとの推計を示した。
「気候変動に対する抵抗力を高めた農業・食料システムを構築できるよう取り組む必要性に迫られている」とECIUで土地・食料・農業部門の代表を務めるトム・ランカスター氏は言う。
同研究では、洪水の影響が小麦の生産で特に深刻だとわかった。
小麦の自給率は2018─22年平均の92%から減少し、国内消費量の約3分の1を輸入に頼ることになるとの見通しを示している。
こうした影響を受ければ、パンやビスケット、ビールなどといった基本的な食品も価格上昇を避けられず、生活費の高騰に何年も苦しんできた消費者にさらなる苦痛をもたらしかねない。
英政府が今週公表した最新の食料安全保障指数によれば、果物は国内消費量のちょうど17%、野菜は55%を国内で生産している。
英政府はこの発表で、食料安全保障の指標がおおむね安定しているとした一方、気候変動による長期的なリスクには警鐘を鳴らしている。
スナク英首相は14日、「ファーム・トゥ・フォーク(農場から食卓まで)」の会合で、野菜と果物の国内生産に注力し、輸入に頼る量を減らす計画を明らかにした。
<より打撃を受けやすい状態に>
世界の食糧安全保障は、加速する気候変動の影響に以前から脅かされていたが、22年に始まったロシアによるウクライナ侵攻などといった政治的・経済的要因もこうした懸念に拍車をかけた。
昨年12月にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、英国を含む130カ国以上が自国の気候アクションプランに食料供給・農業について組み込むことで初めて合意した。
複数の農業団体や環境団体からは、不規則な気候に合わせて農業の体制を整えるためには、より早急な対策が必要だとする声も上がる。
「こうした『全か無か』の雨量、つまり豪雨か日照りかという天候こそ、まさに私たちの懸念材料だ。
どちらにせよ耕作地の縮小につながるからだ」と、英レディング大学の水門地質学教授、ハンナ・クローク氏は述べた。
英政府の独立諮問機関である気候変動委員会(CCC)が昨年公表した年次報告書によれば、農業は主要経済セクターの中でも突出して気候変動に順応する戦略が欠けた分野だという。
「私たちは食料価格の変動に対応できず、より打撃を受けやすい状態のままになってしまう」とクローク氏はオンラインの会見で語った。
英国の消費者は既に、気候変動に伴う価格上昇を感じ始めていると同氏は言う。
今年、カカオ生産地域である西アフリカでの異常気象を受けてイースターエッグのチョコレート価格が上がっていたこともその一例だと指摘した。
引用元: ・【気候変動で深刻化する食料危機】対応迫られる英国、食品価格上昇は避けられず
コメント