実際のところ、これは北朝鮮国内においては常識レベルの話だ。最高指導者の権威を傷つける行為は最大の罪であり、そのことを知らない国民はひとりもいないだろう。
それでも、「過ち」を犯してしまうことはある。今から10年以上前の話になるが、こんなことがあった。
2010年初め、黄海南道(ファンヘナムド)に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第4軍団のある師団長の専用車が、軍総政治局の会議に参加するため平壌に向かっていた。
彼が乗っていたのは、排気量3275ccのSUV「パラディン」。中国の自動車メーカー・東風汽車と日本の日産自動車の合弁会社が生産しているもので、北朝鮮は2007年、この車を300台輸入し、軍の師団長と師団政治委員たちに与えた。
当時の北朝鮮では、最新の車である。そんな車を、普段は田舎のデコボコ道で走らせるばかりだった件の師団長は、首都に通じる高速道路に進入するや、整然と舗装されたアスファルトに気分が浮き立ったようだ。
「おい、思い切り踏んでみろ」
たぶん、運転兵にこのような指示を与えたのだろう。パラディンはぐんぐん加速し、夜間でもあり車のまばらな高速道路を疾走した。
すると、彼らの車に追い越された1台の乗用車が猛然と追い上げてきた。そしてパラディンを追い越し、道をふさぐようにして止まった。見ると、車種はメルセデスベンツの「S600」である。
北朝鮮では、ベンツは朝鮮労働党の幹部だけが乗ることができる。それも、大臣クラスの党書記ですら「S280」止まりである。それをはるかに上回る高級車に乗っているのは誰か。師団長も運転兵も、すっかり怯えて固まってしまった。
するとS600の窓が開き、ひとりの「若者」が顔を出すと、パラディンをひとにらみして何も言わず行ってしまった。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
翌日、軍総政治局の会議場に、その師団長の姿はなかったという。師団長が悲惨な末路を辿ったであろうことは想像に難くない。
しかし、これはまだ序章に過ぎなかった。この後、政権を継承した金正恩氏が、居眠りしただけの軍高官や、停電によるトラブルについて弁解した工場支配人らを、次々と抹殺していったのだ。
高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト 4/27(土) 8:24
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/508ebd0b77acd9490c6a4fb48fb17ac2411603c7
引用元: ・【北朝鮮】金正恩の大型ベンツを「中国車」で追い越した軍高官の悲惨な運命 [4/27] [ばーど★]
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