――「ギャンブル依存」という言葉はややなじみが薄いですが、どんな症状なのですか?
パチンコに狂った親が車中に子供を置き去りにして死なせてしまう事件が後を絶ちませんね。あれは氷山の一角で、いまや統計的には200万人のギャンブル依存者がいると考えられます。
正式には「病的賭博」という病名ですが、アルコール依存症などと同様、やればやるほど深みにはまるのが特徴です。離脱期(禁断症状)もありますから「ギャンブル依存症」と呼んで差し支えないでしょう。要するにギャンブルのことしか考えられなくなってしまうのです。
いままで200症例以上を診てきましたが、日本のギャンブル依存の特徴はパチンコです。私の勤務している八幡厚生病院に最初に入院されたのも、中年のパチンコ依存の男性でした。
一緒に来たお母様は憔悴し、「こんな息子じゃなかった」と嘆くばかり。聞けば、10年にわたって、家族が家1軒分くらいの借金を尻拭いしていたばかりか、ヤミ金融にも借金があったのです。
他の例でも、みな借金まみれになっていますね。ある患者さんは大企業の社員でしたが、3000万円くらいの退職金を2年ほどでパチンコに注ぎ込んだ挙句、さらに7、800万ほどの借金があった。
両親に連れてこられた30代の男性の例では、会社の金に手をつけるほど。家を売って住むところもなくなり、栄養不良で担ぎ込まれた患者さんもいました。
老若男女問いません。女性のほうが短い年数で依存に至る傾向があります。こうなると、家族は本人の顔も見たくないのです。
「もう、頼むから死んでくれ」と家族が訴えるのは、この病気くらいではないでしょうか。
――そこまでハマってしまうのは意志が弱いからですか?
違います。意志や性格の問題ではありません。これはまさに病気なのです。ですから、家族がいくら説教をしても、何の役にも立ちません。
最初のうち、家族は借金の尻拭いをする代わりに誓約書を書かせたりするのですが、これは全くの無駄です。糖尿病や高血圧を意志の力で治そうとしても駄目でしょう? それと同じで、重要なのは一刻も早く「治療のコース」に乗せることです。
まずは2カ月、3カ月の入院治療こそが有効です。脳の生化学的研究によると、ギャンブル依存者は、ドーパミンとノルアドレナリンの量が増加し、セロトニン系の機能が低下していることが明らかになっています。つまり、人間の脳の仕組みからしても、誰でも陥る可能性がある病気なのです。
私は、たとえお釈迦様であっても、ある条件に置かれれば立派な「ギャンブル依存者」になると考えています。
ギャンブル好きな読者も、本書で紹介している診断表で自己診断してみてはいかがでしょうか。
――具体的にはどんな治療をしていくのですか?
まず、入院期間をご本人に決めてもらいます。通常は2、3カ月。閉鎖病棟ではないのでパチンコにも行けますが、そうなったら強制退院。
投薬は軽い睡眠薬程度です。基本的にはさまざまなミーティングに出てもらうことが治療です。GA(ギャンブラーズ・アノニマス)といって、アルコール依存症治療にならってつくられた自助グループにも参加してもらいます。小グループで具体的なテーマに沿って自分の内面を語るのです。
「家族に迷惑をかけたこと」とか「自分の意志が働かなかった時のこと」など、心の奥底を吐露していく。いわば、常に自分の病気に直面するわけです。
引用元: ・【ギャンブル依存症の恐怖】「もう頼むから死んでくれ」と家族が見放すことも・・・精神科医 「いままで200症例以上を診てきましたが、日本のギャンブル依存の特徴はパチンコです」
競馬場にギャンブルでなくなった人の慰霊碑を建ててあげて。
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