企業は、こうした情報を誰かに販売することができる。
アメリカ自由人権協会(ACLU)マサチューセッツ州支部の「自由のための技術」プログラムを率いるケイド・クロックフォード氏は、「トラッキング(追跡)デバイスは、私たちに驚異的な能力を授けてくれました。世界中の誰とでもつながり、これまでにない大量の情報にアクセスできるようになったのですから」と語る。
「その一方で、企業や政府が私たちの一挙手一投足や思想までも追跡することを可能にしてしまいました」
ある種の人々にとっては、追跡技術は安心感を与えてくれる。位置情報共有アプリを使って友人や家族に自分の居場所を教えている人は多い。
親は幼い子どもの居場所を知るために米アップルの「エアタグ」や韓国サムスン電子の「ギャラクシー スマートタグ」を身につけさせているし、飛行機を頻繁に利用する人は荷物の紛失に備えてタグを付けている。
SNSユーザーにとってはジオタグ付きの映えスポットの写真はなくてはならないものだ。
消費者が個人データを収集されても、そのデータに基づいてより良い製品やサービスが提供されるようになるなら抵抗は少ないだろう。しかし、米カーネギーメロン大学ハインツ・カレッジ教授で、情報技術と公共政策を研究しているアレッサンドロ・アクウィスティ氏は、「経済の観点からは、個別化されたネット体験から誰が最も利益を得るかはそれほど明確ではない」と指摘する。
これには、位置情報から生成される行動ターゲティング広告なども含まれる。例えば、カフェによく行く人には、コーヒー商品や近くにある他の店の広告が表示されるといったことだ。
「広告代理店は、消費者について収集した大量の情報を、主に自分たちの利益のために戦略的に利用できます」とアクウィスティ氏は言う。
「トラッキングは、広告においては、一般に言われているほど消費者にとって有益ではないようです」
スマートフォン(スマホ)、スマートウォッチ、コンピューターが私たちの個人情報を共有しているのは明らかだが、私たちが知らず知らずのうちに秘匿性の高い情報を共有しているテクノロジーはほかにもたくさんある。
バンキングアプリには、詐欺の判断や疑わしい取引の防止に役立てるため、スマホの位置情報を追跡しているケースがあることが分かっている。
ホームセキュリティーシステムは位置情報を使ってジオフェンスと呼ばれる仮想境界を設定し、特定の機能の自動化に役立てている。
例えば、ジオフェンスの外に出ると自動的に在宅モードから外出モードに切り替わるといった具合だ。
空港に設置されている顔認識機能内蔵カメラのデータは、空港利用者に不利益をもたらすかもしれないというセキュリティー上の懸念が提起されている。
あなたがウェブサイトをクリックしたり、クッキーに同意したり、クレジットカードで買い物をしたりすることも、“あなたのデジタル日記”として逐一書きとめられている。
米コロンビア大学ビジネススクールの計算社会科学者で、ビッグデータを使ってオンライン環境と人間の行動との関係を研究しているサンドラ・マッツ・サーフ氏は、「個々のデータは、脅威には見えないかもしれません」と言う。
「けれどもこうしたデータの痕跡を組み合わると、あなたがどのような人物なのか、かなり正確に把握することができるのです」
こうしたデータは、最も高い価格で入札する人に売られる。あなたに関するデリケートな情報が、データブローカーから外国政府や法執行機関、雇用主に流れる可能性があるのだ。
引用元: ・【売買される、あなたの位置情報】スマホの設定は大丈夫?
知りたいことは知られてる。
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