タイトルにあるように今、欧米諸国では自身の性別に疑問を抱く少女が増えており、国によっては幼い子どもでも容易に性別変更ができてしまう。「多様性の時代、すばらしいことじゃないか!」と称賛する人もいらっしゃるが、実は全ての人がハッピーなわけではない。中には成長をしてから性別転換をしたことを後悔する子どもいて、心と体にダメージを負ったままつらい思いをしている子どもいる。
この本はそういう悩みをもつ当事者200人、50家族に取材をして問題の背景に行き過ぎたジェンダー教育やSNSの影響があるのではないかと探求していくノンフィクションだ。2020年に米国で出版された後、ベストセラーになりエコノミスト誌やタイムズ紙の年間ベストブックにも選ばれ、フランス語、ドイツ語、スペイン語など9つの言語に翻訳されて各国で出版され誰でも読むことができていたが、日本では「焚書」扱いされていた。
実は、この本はもともとKADOKAWAから『あの子もトランスジェンダーになった』というタイトルで今年1月に刊行の予定だったが、「トランスジェンダー当事者への差別を扇動する」という抗議活動によって出版中止に追い込まれていたのである。
そこで宙ぶらりんになっていたこの本を引き取ったのが産経新聞出版だ。
しかし、そこから「脅迫者たち」が驚くような事態が起きた。
「脅迫」の事実がニュースで報じられると、SNSなどで「みんなで応援しよう」という動きが盛り上がって注文が殺到したというのだ。同書の新聞広告にも「皆様の激励に御礼申し上げます Amazon総合1位」という文言が誇らしげに掲げられていた。
さて、こういう現象を耳にすると、トランスジェンダー当事者に対して特別な思い入れのない一般のみなさんはきっとこう首を傾げるのではないか。
「今どき、なんで脅迫なんて愚かなことをするのだろう?」
出版が強行されたらされたで「よくも警告を無視したな」なんて、仮に産経新聞出版や販売した書店に火を放ち、怪我人や死者などの被害者を出そうものなら、脅迫者は世間から批判を浴びる。
そうなると、トランスジェンダー当事者への差別や偏見が助長されてしまうのも、当然だろう。「焚書」していた人というのは、自分たちが正しいと信じることを守るためには、何の関係もない出版社社員や書店員の命などどうでもいいと考えている暴力的で危険な人々なのだ、という認識が社会に一気に広まるからだ。
わかりやすく言えば、「この本に反対するのは対話が通じないヤバい連中だ」というネガイメージが定着する。それに伴って、ヤバい連中が人を傷つけてまで正当性を主張するトランスジェンダー当事者というのも、「ヤバい連中」に違いないという誤解が定着してしまうのである(念押しするが、「トランスジェンダー当事者=ヤバい連中」と言っているわけではない)。
このように今どき「焚書」などまったく理にかなっていない。にもかかわらず、人はなぜ「火をつけるぞ」などという不毛な脅迫を止めることができないのか。
いろいろな考え方があるが、個人的にはこのような脅迫者は、「正義感が異常に強くて善悪の判断がバグっている」ということがあると思っている。
とにかく「自分が正しい」と信じて疑わないので、それと1ミリでもズレた話が出版されたり、記事にされたりしていることが許せない。だから、そういう「社会悪」が広まることを食い止めるためには、脅迫や放火なども「正義の暴力」を行使するのは致し方がない、という自己中心的な考え方にとらわれているのだ。
冷静かつ客観的に考えれば「脅迫」や「放火」でトランスジェンダーへの理解が深まることなどあり得ない。
しかし、とにかく自分が信じていることが絶対に正しいので、それを否定するようなこの本の存在が許せない。こういう「理不尽な社会悪」をとにかくこの世から全滅しなくてはいけないという強烈な使命感が、「出版したら火をつけるぞ」という「正義の暴力」につながってしまっているのではないか。(抜粋)
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/dcbac77b19ad237e3eca1fce302e42db9bc4d873&preview=auto
引用元: ・【論説】正義感がバグった人たち、トランスジェンダー推し進めることの問題暴いた本を潰そうとする
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